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Observer's name:4章 2/7
2004,London suburbs
俺はベッドに寝転び、今回の件について何百回目かの整理を試みた。
二〇〇四年十二月五日──《L》達からの連絡が完全に途絶えて丸一ヶ月。
《L》に緊急事態が起きた場合、ロジャー宛に送られるカウントダウンのプログラム。
それが、ゼロになった日。
《L》が死んだ──と、《ハウス》側で断定せざるをえなかった、辛い日。
真っ先にその事実を知らされたのは、二人の《L》後継者候補──ニアとメロ。
そして、メロはその晩、《ハウス》から去った。
ロジャーから俺に連絡が来たのは次の日のこと。
俺はもう、《ハウス》からとっくに去っていて、内部のことにはあまり関わらないようにしていたのだが──ここまで事件が重なっては、《L》候補をはずれた者も引っぱり出し、とにかく何かに協力させるのが向こうの方針のようだった。
いかにあの《L》一人に《ハウス》が頼り切っていたか、ということの裏返しでもある。
《ハウス》に戻り、ニアに助力して《キラ》捜査班に加わるか。
メロの行方を追い、監視、もしくは《ハウス》へ連れ戻すか。
どちらかには「必ず」協力するように、とロジャーは念を押した。さもないと、契約違反だとも。
《L》養成プログラムから外されて数週間後。俺はロジャーと長時間話し合い、二つの条件つきでとある契約を結んでいた。
条件その一。俺は《卒業生》として、一定の金額を《ハウス》に生涯援助し続ける。また、何かあった際《ハウス》の関係者には、優先的に協力する。
条件その二。俺が十八歳になるまでは、身柄は常に《ハウス》の監視下に置かれる。
その代わり俺は、外で一人で暮らす権利を手にした。
以前協力した顔面認識システムは、世界中で爆発的に売れ、ロイヤリティは莫大なものだった。
もちろん入ってくるのはその一部だが、それでも一生を遊んで暮らせるほどのものになることは間違いなかった。
だが、そういったことは《ハウス》から俺の口座が完全に切り離される、十八歳になるまでおあずけだ。毎月の生活費などはきちんとした金額が支給されているし、今のところ特に文句は無い。
俺が欲しいものといえばパソコンのパーツやゲーム機といった些細なものだし、十分にやっていける。
働いてもいるので、金はむしろかなり余るほどだった。当初、《ハウス》の研究部門のチームリーダーへと誘われていたのだが、そっちは丁重に断った。
代わりに、ワイミーズグループが抱える無数の企業のうちからIT系のものを選び、契約社員として仕事をしている。出社はしない。ネットを使ってプログラムのやりとりをするだけだ。
俺にしてみれば退屈しのぎだが、おかげでずいぶんそこの会社の業績が上がっているらしい。
《ハウス》もワイミーズグループの一つなのだし、俺のこのアルバイトは《ハウス》つながりでもある──ということで、まあ黙認されてはいるようだ。逆に稼ぎ過ぎると、本来の生活費支給を削減される可能性があるので、契約金をあえて下げたりという小細工も重要。そのあたりの煩わしさを除けば、悪くない暮らしだ。
だが、メロ──俺のこの選択は、果たして正しかったのだろうか?
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