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Observer's name:4章 7/7
「……メロ、行くんだろ?」
「当たり前だ」
「お前自身が《L》じゃなくてもか?」
「ロジャーから聞いてるんだな?」
俺はうなずく。
メロは少しだけ目を閉じると、ベンチに行儀悪くずるりともたれかかった。
「うん。俺はどうあがいても、二番目にすぎない。マットがいなくなってから、俺も一人で色々考えたけどな。《L》を継ぐのはニアだ。悔しいけれど、負けたくないけれど、認めたくないけれど──ニアなんだ」
それでも、とメロは天を仰いで後を続ける。
「それでも……俺は《キラ》を探しに行く。俺は俺のやり方で《キラ》について調べる。あらゆる手を使って《キラ》を追い詰める。そして、《L》を殺した罰を与える。必ず!」
「どんなに汚い手を使ってもか?」
「《キラ》は、常識外の怪物だ。裏技を使って勝つ卑怯なプレイヤーのようなものだ。ならばこちらも、いちいち真っ当に相手をしてやる必要などないだろう?"ゲームは勝たなければ、パズルは解かなければ、ただの敗者"……根暗なニアの野郎も、たまにはいい台詞を言うもんだな」
「メロ」
俺は、自分のゴーグルの後部に指をかけると、一気に留め金をはずした。
ぱちり、と小気味のいい音がして、頭部は緩やかな締め付けから解放される。
「な、なんだよマット、急に……」
ゴーグル無しで外をちゃんと見るのは何年ぶりだろう?ぐるりと辺りを見渡して──目の前の相手をはっきりと見つめる。
曇っていた空は晴れわたり、月が煌々とメロの顔を照らしている。
「俺はお前に着いて行く。いいな?」
メロは黙ったままだった──が、そこに浮かぶ《標識》は全ての《肯定》。
俺を受け入れ、俺と共に歩む《決意》。
俺は冷たい地面に片膝をつけ、メロの手に触れる。
「メロ、お前は俺を使え。俺はお前が指示するあらゆるものを《読む》。全ての真実を《読む》。俺は本来ならば存在してはならないカード、三枚目のジョーカーだ。それでいい、俺を使え。俺の脳が焼き切れようが、廃人になろうが、俺を使え。一瞬たりとも遠慮することなく使え。考えられる限りの汚い手段を全て使え。考えられる限りの駒を集めろ。考えられる限りの罠を全て敷き詰めろ。攻撃の手を決して休めるな。守りに入るなんざ糞食らえだ。《キラ》を安らかに眠らせるな。そして必ず──勝て!」
そのまま、中世の騎士のようにメロの手に軽く唇をつける。
俺は固く誓う。
自分が今選んだものを、二度と離さないために。
ぎゅっと握り返してくるメロの手を更に強く握ると、俺たちは立ち上がった。
ゴーグルを着け直し、コートのポケットに入れていたものを確認する。
ここにたどり着く前、とっさに自宅に寄って準備してきたもの──俺名義のカードに、明日付のアメリカ行きチケット、プラス偽造パスポート二人分。
時間がなかったので焦ったが、《ハウス》の口座に侵入して、十八歳になったら受け取れるはずの金も全てこちらの口座に移している。
これだけあれば、最初の資金としてはまずまずだろう。
既に言葉は必要なかった。俺はメロを《読み》、それに従うだけだ。
クリスマスの鐘の音が響き渡り出した街を、メロと俺は手をつないだまま走っていた。
《標識》──出発!!
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